『ホワイトプルームマウンテン』

ホワイトプルームマウンテンホワイトプルームマウンテン
ポール・キッド著 荒俣 宏訳
スコア選択: ★★★★

これも映画『ロード・オブ・ザ・リング』効果だと思いますが、新たなファンタジー小説が荒俣宏氏の手によって翻訳されました。それにしてもよりによって"GRAYHAWK"という世界のファンタジーが日本で翻訳されて読むことができるようになるとは思わなかった。

この小説はテーブルトーク・ロール・プレイング・ゲームと呼ばれるジャンルで有名なDungeons & Dragonsというゲームから生まれた小説です。この元なっているのは同名のゲーム用シナリオの1つで、調べてみると1979年にシナリオが発表され、1999年にノベライゼーション、そして今なって翻訳されたというのだから驚きです。

ここまで書いてしまうと「ゲーム小説」のように感じるかもしれませんが、本書はそんなことはなく、さほどGRAYHAWKというものを知らなくても読めるようになっています。実際、guncoはGRAYHAWKの世界はほとんどしらないのですが、全く問題なく楽しむことができました。

本書『ホワイトプルームマウンテン』はいわゆるヒロイック・ファンタジーというよりも、その分厚さとは裏腹に、もっとポップで茶目っ気のある文章となっています。手にしたときは厚さと値段に首をひねりましたが、内容的にはかなり満足です。それぞれの登場人物の生き生きとしていることと言ったら文句なし、というところでしょうか。ちょっと値段が2,800円とお手ごろではないのが難点ですが、この作品を気に入れば、同じ登場人物を扱った続編"Descent into the Depths of the Earth"と"Queen of Demonweb Pits"の翻訳も決まっているそうです。ただ、最近ブームに乗って訳してみたものの、売れずに続刊される気配が全くないものも存在していますが、大丈夫でしょうか?

関連リンク

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  • Wizards of the Coast: Games: D&D: Articles: D&D Adventures: White Plume Mountain(Revised) - 英語。元となっているシナリオ"White Plume Mountain"を現在の3.5版向けに書いてされたものがダウンロードできます。
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  • 小説のあとがきにある通り、現在のDungeons & Dragonsの版元であるWizards of the Coast社のサイトに、元のシナリオを現在のルールに合わせて改版されたものが、無料でダウンロードできるようになっています。それをざっと読んでの小説との違いをまとめてみました。これ以降は小説のネタばれがあるので、小説を読んだり、このシナリオをプレーする予定ある方はご注意ください。小説を読んで興味は持ったんだけれども、シナリオをプレーすることはないという方用です。

    シナリオではホワイトプルームマウンテンへの導入は、既に3つの武器は盗まれており、その奪還を依頼されるところから始まります。このシナリオ自体はGRAYHAWKの世界に限定されるような設定はされておらず、割とそのあたりはフリーに書かれています。また、実際にシナリオと小説で重なり合う部分はホワイトプルームマウンテン内部に限られており、小説の前後の物語は完全にオリジナルのものになっています。シナリオにはエリニュス出てこないし、小説にはXXXXは影も形もないし。ダンジョンの最初の3又で守っているジャイノスフィンクスの名前は小説だと「イーニッド」だが、3.5版のシナリオでは"Etrusca"だったり、ヴァンパイアがただのヴァンパイアではなくドワーフ・ヴァンパイアだったりします。このあたりは割りと小説では小説向けにアレンジされているようです。

    小説で気になった部分をシナリオから拾い上げてみるとい、第17章前半の舞台となった部屋"The chamber of globes"では、シナリオでも片っ端から割ってみるしかないのだが、最初に割ったglobe No.1は悪い方の1つ。運がよければもうちょっといいものが手に入ったのに。それにしてもその後、機転を利かせて部屋から脱出されてしまうと、DMをやっていたらさぞ悔しいことだろうと考えてしまいます。

    続く第17章中盤の"A Prime choice"の部屋ではフレッシュゴーレムから謎賭けが出される。小説中ではこの謎が解けず、力で解決するというゲームとしては割りと"リアル"な解決がなされているが、ちょっと冷静に考えれば分かる通り、答えは"9"。それ以外は全部素数だし。

    また、いくつかの面白い部屋が飛ばされています。このあたりはシナリオを読むかプレーするかしてください。


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    by gunco | 2006-08-10 23:55 | Books as precius